ハブジャンプテレビマン

サメを命の恩人と仰ぐテレビマンエッセイ

n1082 方式論

α方式とω方式の図で解るようにグリーンのヘッド部分を一回りしているのがα方式でω方式は交差していない。

テープ幅は2、5センチあるのでα方式の場合ヘッド部分のテープ交差を考えると、かなり長くする必要がある。

図緑のヘット部分、缶ビールのロング缶を想像して頂きたい。

なおかつ送り側と巻き取り側のリールにかなり奥行き、いわゆる前後の段差をつける必要がある。

送り側と巻き取り側のリールにも角度をつける必要がある。

ソニーが提唱するオメガ方式は平面でヘッド部分はロング缶状にする必要は無い。

将来的にテープスレーディングを自動化、又はカセット化する方法もオメガ方式なら考えられる。

ひかるは将来的な事を考えオメガ方式採用に行動を起こすのである。

流れでα方式に決定すると、いずれアメリカがα方式の欠点をカバーしたオメガ方式に近い方式で日本に迫って来る事を恐れたのである。

当時の放送局はフイルム素材が溢れ保管場所に倉庫を次々と契約するが間に合わない。

著名人が亡くなりライブラリーを探すがフイルムでは見つけるのが困難。

高速回転出来ないのがフイルムの最大の欠陥である。

ライブラリーに行き詰った局はアルファでもオメガでも、どれでも良い。

ω方式の20分テープより2時間テープのα方式が当然。α方式導入を疑問視する人は一人もいなかった。

しかし録画時、台本を5、6ロールに分割録画。出演者の都合でロール別にリールを何度も中途で架け換える。

将来のカセット化や使い勝手を考えると、交差のアルファは大きな欠点、オメガ方式になる。

ひかるはオメガ方式開発拠点であるソニーの厚木工場へ乗り込む。

駅前はだだっ広い田んぼと畑だらけ。倉庫のような建物があり、その中で20代後半の若者が5、6人オメガ方式を開発していた。

ひかるはまだ沖縄なまりが取れず、着ている服はオンボロ、名字は見た事もない沖縄名字。

訳の分からない、打倒アメリカが迫って来るだの、チンプンカンプンである。

うさん臭い奴 しーしーと追い払いたいところだろうが、年配の人が黙って聞いている。

話が終わると、訛りが気になったのか、ご出身は、と聞かれたので、沖縄であると言うと、握手を求め分かりました一緒にやりましょう、と言ってくれたM部長である。

開発は想像を絶するスピードで進み、あれよあれよという間にソニーのオメガ方式は世界制覇、ニ年後畑に倉庫の如き拠点は見事な巨大な総二階建ての近代的なコンベヤ工場、後にM部長は副社長になったのである。

当時、最初にどうしてもクリアしなければならない問題はテープにカミソリを使って繋ぎ編集するアメリカ方式ではなく、ワンフレーム単位で抜き取り貼り付けていくいわゆる電子編集が出来るか出来ないかが成否を分けるポイントだと見ていた。